シャッターを押すたびに。

 俺なら、
 もっと良い望愛ちゃんの笑顔を、引き出せる。


 更に可愛く! もっともっと可愛く!



 周りが見えなくなるほど必死に、
 シャッターを押していたのに。



「大地君、教えて。
 お兄ちゃんは大地君に
 どんなことを話したりしたの?」



 涙を必死に堪え。

 優しく微笑んだ望愛ちゃんが、
 ファインダー越しに僕の瞳に写って。



――やっと、譲さんの好きな
  望愛ちゃんの笑顔を引き出せた!


  そのまま! そのまま!

  そのサイコーの笑顔、
  カメラに収めさせて!


 そう思って、嬉しくなったはずなのに。


 俺の指が、
 シャッターを押そうとしてくれない。





 俺の脳に

 譲さんとの思い出が、蘇ったから。