まだ、青く。

「勘違いしてないか、君。僕はただありがとうの意味を込めて後輩の頭を撫でただけだ」

「なら、自分の部活の後輩にもするんですか?」

「まぁ、それなりに良い泳ぎをしたらね。これも僕からしたらコミュニケーションだから」


凪くんはずっと鑑先輩を睨んでいる。

こんな怖い顔をする凪くんを初めて見た。

確かに表情筋は動かない方だけど、しかめっ面のまま人を睨んだりしたことなんて、出会ってから今まで1度としてなかった。

どうしてこんなにも鑑先輩のことを嫌っているのだろう。

謎がまた1つ増えた。


「水泳部内ではコミュニケーションでも、夏目は水泳部員じゃないのでコミュニケーションは要りません」

「いや、それを決めるのは鈴ちゃんだろう?鈴ちゃんは僕に頭を撫でられて嫌な気はしなかった?」

「あ、まぁ...はい」


咄嗟に振られたし、どう答えるのがベストなのか分からずに私は"はい"と言ってしまった。

視界の奥の兆くんがそろそろまずいと思ったのか、動き出す。


「まぁ、今日のところはこの辺にしておきましょうか。鑑先輩、ご活躍を祈っています!地方大会目指して泳ぎまくってくださいっ」

「あぁ、そうするよ。そしたら、また鈴ちゃんにも会えるし。またね、鈴ちゃん。鈴ちゃんも体調に気をつけて、部活に勉強に頑張ってね」

「は、はい...」


先輩は一礼すると、会議室をそそくさと後にした。