まだ、青く。

「虹森さんはスランプみたいです」

「えっ?」

「思ったような作品が出来ずに悩んでいます。今まで作りあげて来たものを越えられない葛藤から、ガラス細工への情熱が冷めてきてしまっているようです」

「なるほど。そういうことか...」


私は名前から人差し指を離した。

あの手紙以来ずっとこの能力を使ってこなかったから、いつもより体がだるい。

それに、手にビリビリと鈍い電流が走っている。


「大丈夫か?」

「はい。このくらいのことなら」

「それなら、いいけど。それにしても、スランプ、か...。スランプは俺達にはどうすることも出来ないな」

「いえ、そんなことはないと思います。私がガラスとお話しします。ガラスがなりたいイメージに変えてもらうんです」


なんて言ってしまったけど、

そもそもガラスとお話しするとか、

メルヘンなことを言ってしまったし、

さすがにおかしいって思われたかも...。

ガクンと肩を落とした私に、志島くんは優しい言葉を紡いでくれた。


「ガラスの声が聞こえたから、さっきもあんな風に?」

「はい...。ガラスに入り込みすぎてしまって...」

「なら、出来る。絶対、聞こえる。伝えられる。夏目さんなら......やれる」


その言葉が耳を抜けて胸で木霊した瞬間、

ぱあっと視界が開けた。

まるで、どこまでも続く青空の下、そよ風に揺れる草原の上に立っているみたいに目の前が明るい。

光溢れる世界だ。


「そう言って下さりありがとうございます。私、やってみます」


志島くんは黙って力強く頷いてくれた。