まだ、青く。

「夏目さん」

「あっ、はい」


名前を呼ばれるまで呼吸を忘れていた。

慌てて息を吸って肺に酸素を送るも、窒息しかけていてクラクラする。

そんな私に志島くんは畳み掛ける。


「怪我してない?」


声が上手く出せず、必死に頷いた。

でも、首の上下運動のし過ぎでさらにクラクラして若干吐きそうになる。

落ち着こうとしてもなかなか落ち着けなくて、しばらく私は壁にもたれて風に吹かれることにした。


「皆信じてくれた?」

「あっ、はい」


志島くんが私の1メートル左側に腰を下ろす。


「そういう人達だから」

「そう...みたいですね」


それから沈黙は続いた。

言の葉の間に吹き込む風は

なぜだか志島くんといる時は

痛くない。

心地よくて

ずっと吹かれていたくなる。

そんな理想的なそよ風になる。

風に吹かれるのが

こんなにも心地よいことだったんだと

産まれて初めて感じられた。