まだ、青く。

私は岩山を登って小さな鳥居をくぐった。

ここで凪くんのお母さん、夕さんは願っていた。

海神様と繋がっていた夕さんなら、私の願いも聞いてくれますか?

図々しいことを言っているのは承知の上で私は...願いたいと思います。


私は目を閉じ、両手を強く握った。

風が冷たい。

耳がちぎれそう。

頬は凍りついたように動かない。

唇は感覚がない。

それでも、

願うことは出来る。

周りの声が聞こえなくなり、

誰の心も読めなくなった私が、

最後に知りたいと思ったものがある。

それは......


凪くんの心。


この胸を波立たせる大きな存在の

その真の心を知りたいと思った。

"四十万凪"と何度も何度も名前を書いた。

何度も何度も指でなぞった。

でも、見えなかった。

なぞる度に、

触れる度に、

指先から痺れていく。

心にぽちゃんぽちゃんと淡いピンク色の雫が何滴も落ちて、

いつしか私の心を満たした。

この靄が晴れれば

青空が広がれば

心の色が見える。

私だけの心が見える。

溢れた感情が震えて、

その殻をパリパリと破って

空へと羽ばたく。

その翼で青空を泳いでいく。

海と溶け合う空は

青くて、

青くて、

まだ、青くなる。

その青さは光。

私を照らす光になる。

だから、私は

この想いを

言の葉に乗せる。