まだ、青く。

「夏目はICカード持ってる?」

「いいえ。うち、現金主義なので...」

「ふふっ。そ」

「えっ?な、何がおかしいんですか?」


凪くんはふいに笑う。

それが、私のお腹の虫を刺激してなんだかもぞもぞとしてくる。

むず痒くなる。

凪くんは背中を小刻みに揺らしながら切符を買い、そんな私の心情を知る由もなく、切符を1枚渡した。


「あ、あの、お金...」

「いい。それより流れに乗って行かないと。田舎の駅とは訳が違うから、ここは。俺が後ろ着いてくから、先にそれ、あそこに入れて改札抜けて」

「は、はいっ」


私は回りの方々の波に乗った。

水族館でいわしの群れを見たことがあるけれど、前を泳ぐ魚に着いていけなかったり、岩にぶつかったりすると自らの命が危険にさらされる。

私もこの大きな群れの中の1人なんだ。

飛び込むしかない。


「手、離すよ」


私は頷き、そのまま流れに乗った。

切符を改札口に入れ、

向こう側から出てきたそれを瞬時に抜き取る。


「やった...!出来た...!」

「良くできました」


凪くんはちょっとバカにするように薄笑いを浮かべながらそう言ったけど、全く気にならなかった。

それよりもまた1つ新しいものに出会って知って、それを使えたことが嬉しい...。

そう、この胸を包み込むこの熱は

...嬉しさ。

私、今嬉しいんだ。


「今度は12番線から電車に乗って封筒に書かれた住所の最寄り駅までいこう」

「はいっ!」


私の突然の大声に凪くんはまたぎこちない笑みを浮かべていた。