まだ、青く。

「夏目?」


凪くんの声で我に返った。

一瞬意識が遠退いて自分が自分じゃないような感覚に陥ったけど、私は分かった。

分かったんだ。

だから、ちゃんと

伝えなきゃ。


「あ、す、すすみません!あ、あの、私...私も一緒に見たいです。見たいです、花火!」


食い気味になって声を張り上げると、凪くんはまた笑みをこぼした。


「ありがと。じゃ、これ捨てたら特等席にいこう」

「特等席ですか?」

「そう。たぶん誰もいないと思う」


私は凪くんの言葉に興味をそそられ、半信半疑ながらも凪くんの後に着いていった。

ごみ捨て場から少し歩いたところに、今では使われなくなったプールがある。

5年前に屋内の市民プールが出来てからというもの、水泳部の練習で少し使われるくらいで滅多に使われなくなった学校のプールに、私と凪くんは忍び込むことになった。

凪くんがフェンスをよじ登り、中から鍵を開けてくれて私は無傷で無事に進入することが出来た。

プールには災害用の水が貯められているから水面は月の光を受けてキラキラと輝き、穏やかな風に揺れていた。


「3か4が見易いんだけど、どっちがいい?」

「4は縁起が悪いので、3で」

「確かに。じゃ、俺は5にする」


そう言って凪くんは1つ挟んで隣の5のスタート台に腰かけた。

秋の風が頬を撫でる。

回りの木々がそよそよと音をたてる。

2人で何をしてるんだろう、なんて噂話が聞こえてくる。

そして、私は聞こえてくることに安心して少しばかり視界が歪んだ。

だって、自分も回りも見えなくなったら、私...全てを感じられなくて絶望しそうだから。

そんな世界では

きっと私の知りたい感情は

知ることが出来ないから。

だから、今は何でも良い。

感じていたいんだ。

感覚を繋ぎ止めておきたいんだ。