まだ、青く。

玉葱はまるで魔法にかかったかのように大人しくなり、スパッと心地よく裁断された。


「おっ...!き、切れた!切れました!」


玉葱が喋っていない!

こんな奇跡が私の前で起こるなんて。


「そんな喜ぶこと?」

「は、はいっ!もう胸がいっぱいです。痛くなかったみたいですし、すっごく嬉しいです!」

「そっか。嬉しい、か。分かったんだ、"嬉しい"って気持ち」


そういえば...

今勝手に口から言葉が出ていた。

嬉しいって言葉になってた。

胸に沸き上がるこの熱い熱を

"嬉しい"って表現出来た。

私、今...嬉しかったんだ...。


「嬉しいです!嬉しくて仕方がないです!」

「おいおい、玉葱ごときでそんなはしゃぐか~」


隣のパラソルの下で肉と格闘していた兆くんが満面の笑みを浮かべてこちらに視線を投げ掛けてきた。


「ほんとは凪に手握られたから嬉しいんじゃねぇの~?」

「い、いやっ、そ、そそ、それは...」

「杉浦、茶化してないで自分に集中しなさい!まだ1枚も切れてないでしょうが!しかもそれおっきいから!こ~れ!このくらいがベストだから!ったく、もお」