まだ、青く。

洞窟に籠り始めてどのくらいが経ったのだろう。

さっきまで遠くに小さく見えていたアヒルボートが2隻戻って来ていることに気づき、慌てて腕時計を見ると時刻は12時を回っていた。

さすがにそろそろここから出ないと...。

そう思って立ち上がろうとした、

その時だった。


「わっ!」


暗くて良く見えなかったのか、濡れていた岩に足を滑らせてしまった。

頭を打ったかもしれない...。

と心配になったのは、一瞬だった。

私は...倒れてなんていなかった。

ふわりと香るこの香り...。

記憶を辿って思い出す。


あっ...。


気がついて咄嗟に腕を払った。


「大丈夫か?」


声が聞こえた。

閉ざされた空間に鮮明に反響する。


「だ、大丈夫です」


私はそれだけ言って立ち上がった。


「夏目のこと捜してたんだ。どこにもいないから。皆には写真見せてもらったから夏目のも見せてくれないか?」


私の背中に言の矢が刺さる。

それでも私は首を振った。

そうしたら...

耳元に手が伸びた。


私の世界から心地よい音が消え、

小さな生き物たちの声が微かに聞こえ始めた。