翌日、午後一時半頃。
美波は北斗の本日の撮影があるスタジオまで来ていた。
スタジオ前の広場に着いて、ベンチに座る。
スマホを確認しても、北斗からメッセなどは来ていない。つまりまだ終わっていないのだろう。
別に待つのは構わないし、そんなに長くは待たないだろうし。
まだ五月、そう暑くないので、建物の中でなくてもいい。
そして十分ほどで「お待たせ」と声がかかった。
顔をあげると、私服姿の北斗が立っている。
ちょっとだぼっとしたズボンに、上はぴったりしたシャツの上に、薄手の上着。
中学生のごく普通の私服といった姿なのに、元々イケメンなのであるし、スタイルもいいし、髪はセットされたまま来たのだろう。いつも以上にきれいに整えられていた。
「お疲れ様!」
美波の顔は笑顔で立ち上がる。
「じゃ、行くか。電車でひと駅なんだ」
「うん!」
スタジオは駅前だ。歩いて十分もかからない。初めて来た美波も迷わなかったくらい。
しかし行こうとしたところで、うしろから声がした。
「北斗くん!」
女の子の声だった。北斗の名前を呼んでいたので、北斗は振り向く。
呼んできたのは知り合いだったようで、「ああ、向坂(こうさか)」と返事をした。
美波もそちらを振り向くと、女の子が近寄ってくるところだった。スタジオから出てきたようだ。
知り合いかな、と美波は思う。
次に、モデルさんかな、とも思った。
何故なら、向坂と呼ばれたその女の子は、とても美人だったのだから。
茶色の髪は、きれいに巻かれて背中に落ちている。
前髪は左右に分けられていて、大人っぽい髪形だった。
顔立ちだって。
かわいい系より、目鼻がくっきりしていて、美人系といった顔立ちだ。
美波はそれを見て、ちょっとざわざわしてしまった。
北斗の知り合いなのだ。しかもこんな美人な子が、なのだ。
なんだか気になってしまう。
「北斗くん、帰るとこ? 一緒に帰らない? 車を呼んであるの」
向坂、という子は微笑を浮かべて、北斗を誘った。
だが北斗は美波と約束をしていたのだ。「いや……」と声をにごした。
「悪い。今日はこいつと、ちょっと用事があるんだ」
美波を示して、言ってくれる。
美波はちょっと嬉しくなってしまった。
こんなかわいい子、しかも知り合いらしい子に誘われたのに、自分と用事がある、と言ってくれた。
いや、実際、用事があるのだし、約束していたのだから、そう言って当たり前じゃない。
心の中で、美波は首をひねった。嬉しくなるほどのことだろうか。
美波は北斗の本日の撮影があるスタジオまで来ていた。
スタジオ前の広場に着いて、ベンチに座る。
スマホを確認しても、北斗からメッセなどは来ていない。つまりまだ終わっていないのだろう。
別に待つのは構わないし、そんなに長くは待たないだろうし。
まだ五月、そう暑くないので、建物の中でなくてもいい。
そして十分ほどで「お待たせ」と声がかかった。
顔をあげると、私服姿の北斗が立っている。
ちょっとだぼっとしたズボンに、上はぴったりしたシャツの上に、薄手の上着。
中学生のごく普通の私服といった姿なのに、元々イケメンなのであるし、スタイルもいいし、髪はセットされたまま来たのだろう。いつも以上にきれいに整えられていた。
「お疲れ様!」
美波の顔は笑顔で立ち上がる。
「じゃ、行くか。電車でひと駅なんだ」
「うん!」
スタジオは駅前だ。歩いて十分もかからない。初めて来た美波も迷わなかったくらい。
しかし行こうとしたところで、うしろから声がした。
「北斗くん!」
女の子の声だった。北斗の名前を呼んでいたので、北斗は振り向く。
呼んできたのは知り合いだったようで、「ああ、向坂(こうさか)」と返事をした。
美波もそちらを振り向くと、女の子が近寄ってくるところだった。スタジオから出てきたようだ。
知り合いかな、と美波は思う。
次に、モデルさんかな、とも思った。
何故なら、向坂と呼ばれたその女の子は、とても美人だったのだから。
茶色の髪は、きれいに巻かれて背中に落ちている。
前髪は左右に分けられていて、大人っぽい髪形だった。
顔立ちだって。
かわいい系より、目鼻がくっきりしていて、美人系といった顔立ちだ。
美波はそれを見て、ちょっとざわざわしてしまった。
北斗の知り合いなのだ。しかもこんな美人な子が、なのだ。
なんだか気になってしまう。
「北斗くん、帰るとこ? 一緒に帰らない? 車を呼んであるの」
向坂、という子は微笑を浮かべて、北斗を誘った。
だが北斗は美波と約束をしていたのだ。「いや……」と声をにごした。
「悪い。今日はこいつと、ちょっと用事があるんだ」
美波を示して、言ってくれる。
美波はちょっと嬉しくなってしまった。
こんなかわいい子、しかも知り合いらしい子に誘われたのに、自分と用事がある、と言ってくれた。
いや、実際、用事があるのだし、約束していたのだから、そう言って当たり前じゃない。
心の中で、美波は首をひねった。嬉しくなるほどのことだろうか。