河辺に下りると、さらさらと水の流れる音と、頭上に大きく広がる空がはっきり見えた。
 爽快だった。むしむしした空気より爽快さが上回る。
 夏なのだ。
 きらきら明るい夏なのだ。
 そう感じられて。
「懐かしいな」
 北斗も心地良く感じたようで、穏やかな声で言った。
 美波はもちろん、「うん!」と同意する。
 そのうち、北斗が繋いでいないほうの手を持ち上げた。空の向こうを指差す。
「……お、ちょうど来る」
 美波がそちらに目をやると、なにかが飛んでくるのが見えた。
「飛行機!」
 美波の声はまた明るくなってしまう。
 飛行機は空の向こうへと飛んでいく。美波は視線でそれを追ってしまった。
「いつか、あれに乗る予定なんだ」
 不意に北斗の声が小さくなった。
 美波はそちらを見た。
 いきなり違う話題になったからだ。
 北斗の言葉から知る。
 これは大事な話なのだろうと。
 そしてそれは大事どころではなかった。
「実は俺、高校生になったら海外留学しようと思うんだ」