戸惑ったために、すぐになにも言えなくて。
 その間にあずみが続けた。
「美波には事情があったのに……私、勝手に怒って……、美波の気持ち、考えてなかったよね……」
 謝る言葉は、もっと具体的になる。
 そしてそれは、本当は美波から言いたかったことだった。
 美波は今度、後悔した。
 先に言わせてしまった。
 そもそもここに誘ってくれたのもそうだ。
 自分に謝ろうと思ってくれて、誘ってくれたのだろう。
 ためらったのはほんの数秒だった。
 美波はもう一度、ペットボトルをぎゅっと握る。
 そこにあってくれるあずみの気持ちを包むように。
「ううん。あずみの気持ちを考えてなかったのは、私のほうだよ」
 言った。
 はっきりとした声で。
 あずみが驚いたように美波を見る。
「だから……ごめんね」
 美波は続けた。
 ずっと言いたかったことを。
 一週間も前から言いたかったことを。
 しばらくその場は無言だった。
 セミのみんみんという声だけが遠くに聞こえる。
「……うん」
 あずみは答えてくれたけれど、一言だけだった。
 言うべきことは言ったし、これで仲直りになるのはわかる。
 でもこれでは足りないのではないか。
 もっとちゃんと説明しなくてはいけないのではないか。
 美波はそう思って、「あのね」と切り出そうとした。
 が、その前にあずみが続けた。
「北斗くんと、昨日、お話したんだ」
 北斗と?
 お話?
 その言葉はあまりに急だったので、美波はどう反応していいかわからなくて、きょとんとしてしまった。
 その美波に、あずみは笑った。
 まだちょっと無理をしたという顔だったけれど、とにかく、笑おうとしてくれた。
「お茶、飲んでよ。ぬるくなっちゃう」
 それから付け加えてくれた。
「飲みながらゆっくり聞いてほしいの」