そこまで思い至った途端、美波は、はっとした。
 今も同じだ。
 美波の手を包んでくれる北斗の手。
 あたたかくて、優しくて、安心すると同時。
 とても、ドキドキする気持ちを呼び起こしてくる。
 この『好き』というのは……。
 美波がそこまで考えた、とき。
 手は、ぱっと離されてしまった。
 え、と思って美波はそちらを見る。北斗がにこっと笑っていた。
「でも大丈夫さ。俺も友達と仲直りできたし、今でも連絡するような仲だ。頭を冷やしてから、お互いの気持ちを話し合ったらいいんじゃないか?」
 北斗が言ってくれたのは優しい言葉で、きっと一番の解決策だった、けれど。
 とくとく、と美波の心臓が違う意味で騒ぎはじめてしまった。
 北斗の笑顔。とても優しい。
 こういう笑顔、いつから向けてくれるようになったんだろう、とぼんやり思った。
 でも確かなのは、この笑顔を向けてもらえるのがとても嬉しくて、安心して、それから同じくらい胸の奥がきゅっとする。
 そう感じてしまうことだ。
 美波が動かず、なにも言わなかったからか、北斗はちょっと不思議そうな顔をした。
 いけない、なにかおかしいと思わせてしまっただろうか。
 美波は、はっとして口を開く。手を持ち上げて、濡れた頬も、ぐいっとぬぐった。
「そ、そうだよね。ありがとう」
 それに北斗は、ほっとしたようにまた笑ってくれた。
 手を伸ばしてきて、なにをするかと思えば、美波の頬をぷにっとつまんだ。
「ひゃ……!?」
 突然のことに驚いて、美波は変な声を出してしまう。
 それがおかしかったのか、北斗は声を出して、くくっと笑った。
「そうそう、そんな顔してろ。泣いてちゃ、顔がだっせぇからな」
「……ひどい……」
 安心させるように言ってくれたのはわかるけれど、言い方はそれだったので、美波は膨れてしまう。
 けれど北斗の手。美波の頬をつまんだだけではなかった。
 するっと形を変える。美波の頬を包むように。
 え、と思ったと同時。
 北斗の顔が近付けられていた。
 まるであのとき……撮影のとき、間近で見つめられたときのような状況だ。
 美波は知ってしまう。
 今の北斗の目。
 あのときと同じなのだと。
 美波をしっかり見て、見つめてくれる、優しい目だ。