「お疲れ様でしたー」
撮影は一時間ほどで終わった。カメラマン、マネージャー、そして北斗がそのあいさつで終わりを告げる。
見学していた女子たちから、パチパチと大きな拍手が上がった。
「みんな、今日は見に来てくれてありがとう」
北斗がスタジオから一歩、踏み出してお礼を言う。にこっと微笑んで。
もう撮影は終わっているのだから、今は遠慮なく、きゃあっと大きな歓声が女子たちから上がる。
「はい、では今日、来ていただいたお礼に、北斗くんのチェキを一枚ずつプレゼントします。北斗くんから渡してもらいましょうか」
女性のマネージャーが、何枚かの写真を持って、やってきた。女子たちからまた、歓声が上がった。
それはそうだ、北斗から直接渡してもらえるというのだから。
一列に並んだ女子たちが、北斗から一枚ずつチェキを渡されていった。
「あ、ありがとうございますっ!」
「ず、ずっとファンなんです!」
渡されるとき、ひとことくらいであるが、北斗に話しかけられる。みんな、きんちょうした様子で、でも顔を赤くして嬉しそうに、北斗にひとことをかけていた。
北斗はその全部ににこやかに、「こちらこそありがとう」とか、「マジで? ありがとう」とか、返事をしていた。
美波もそれに並んでいたけれど、どきどきして仕方がない。
北斗はどういう反応をしてくれるだろう。
だって、自分は確かに見学に参加していたけれど、実はただの観客であるだけではないのだ。
実は……。
「じゃ、次の子……」
ついに美波の順番が来た。北斗の隣にいたマネージャーがうながしてくれる。
美波はどきどきしながら、北斗の前に立つ。
北斗は……、にこっと笑ってくれた。
美波は、あれ、と思う。この顔はなんだかいつもと違う、ように感じてしまって。
「はい、これ」
でも目の前では、北斗がその笑顔のままで、チェキを差し出してくれている。
美波は慌てて、手を出してそれを受け取った。
「あ、ありがとう! あっ、違……、ありがとうございますっ」
つい、『いつも』のように返事をしてしまって、すぐに言い直した。
言い間違えたことに、ひやっとする。北斗に怒られてしまうだろうか。
そのとおり、北斗はちょっとだけ目を細くした。それは、むっとした顔だと美波にはわかってしまう。
表にはわからないだろうけれど。こんな小さな変化でわかるものか。
でもそれは、一瞬のこと。北斗はすぐ、みんなに浮かべていたような笑顔を浮かべて、もうひとこと言ってくれた。
「こちらこそ。『ありがとう』な」
『ありがとう』の言い方は、わざとらしかった。
美波の心臓が、やはりひやっとした。
怒らせてしまった、ようだ。
いや、自分が悪い。
こんな場所で、いつものように言ってしまった自分が。
「はい。では次の子……」
でもここで、これ以上話せるものか。
マネージャーにうながされてしまった。
美波は、すごすごと北斗の前から移動した。
次は、美波のうしろに並んでいたあずみ。
「ほ、北斗くん! とっても……素敵でした!」
顔を真っ赤にしてそう言っていて、北斗は「ありがとう」と答えていた。
その「ありがとう」の言い方は、もうすっかりさっきまでと同じものに戻っていた。
撮影は一時間ほどで終わった。カメラマン、マネージャー、そして北斗がそのあいさつで終わりを告げる。
見学していた女子たちから、パチパチと大きな拍手が上がった。
「みんな、今日は見に来てくれてありがとう」
北斗がスタジオから一歩、踏み出してお礼を言う。にこっと微笑んで。
もう撮影は終わっているのだから、今は遠慮なく、きゃあっと大きな歓声が女子たちから上がる。
「はい、では今日、来ていただいたお礼に、北斗くんのチェキを一枚ずつプレゼントします。北斗くんから渡してもらいましょうか」
女性のマネージャーが、何枚かの写真を持って、やってきた。女子たちからまた、歓声が上がった。
それはそうだ、北斗から直接渡してもらえるというのだから。
一列に並んだ女子たちが、北斗から一枚ずつチェキを渡されていった。
「あ、ありがとうございますっ!」
「ず、ずっとファンなんです!」
渡されるとき、ひとことくらいであるが、北斗に話しかけられる。みんな、きんちょうした様子で、でも顔を赤くして嬉しそうに、北斗にひとことをかけていた。
北斗はその全部ににこやかに、「こちらこそありがとう」とか、「マジで? ありがとう」とか、返事をしていた。
美波もそれに並んでいたけれど、どきどきして仕方がない。
北斗はどういう反応をしてくれるだろう。
だって、自分は確かに見学に参加していたけれど、実はただの観客であるだけではないのだ。
実は……。
「じゃ、次の子……」
ついに美波の順番が来た。北斗の隣にいたマネージャーがうながしてくれる。
美波はどきどきしながら、北斗の前に立つ。
北斗は……、にこっと笑ってくれた。
美波は、あれ、と思う。この顔はなんだかいつもと違う、ように感じてしまって。
「はい、これ」
でも目の前では、北斗がその笑顔のままで、チェキを差し出してくれている。
美波は慌てて、手を出してそれを受け取った。
「あ、ありがとう! あっ、違……、ありがとうございますっ」
つい、『いつも』のように返事をしてしまって、すぐに言い直した。
言い間違えたことに、ひやっとする。北斗に怒られてしまうだろうか。
そのとおり、北斗はちょっとだけ目を細くした。それは、むっとした顔だと美波にはわかってしまう。
表にはわからないだろうけれど。こんな小さな変化でわかるものか。
でもそれは、一瞬のこと。北斗はすぐ、みんなに浮かべていたような笑顔を浮かべて、もうひとこと言ってくれた。
「こちらこそ。『ありがとう』な」
『ありがとう』の言い方は、わざとらしかった。
美波の心臓が、やはりひやっとした。
怒らせてしまった、ようだ。
いや、自分が悪い。
こんな場所で、いつものように言ってしまった自分が。
「はい。では次の子……」
でもここで、これ以上話せるものか。
マネージャーにうながされてしまった。
美波は、すごすごと北斗の前から移動した。
次は、美波のうしろに並んでいたあずみ。
「ほ、北斗くん! とっても……素敵でした!」
顔を真っ赤にしてそう言っていて、北斗は「ありがとう」と答えていた。
その「ありがとう」の言い方は、もうすっかりさっきまでと同じものに戻っていた。