「は~、あのときの北斗くんカッコ良かったけど、写真はまた違うカッコ良さがあるよねぇ~」
 うっとりしたような顔で、雑誌を広げているのはあずみである。
 例の撮影見学会で撮られた写真が載っている雑誌、今日発売だったのだ。
 朝からそれを買ってきたらしいあずみは、学校へそれを持ってきて、休み時間に広げていた。
「やっぱりこの微笑みが素敵!」
「王子様って感じだもんね~」
 同じく、北斗ファンのほかの友達も集まってきて、うっとり見とれている子も多かった。
 北斗のページは何ページもあった。
 なにしろ今回は特集なのだ。中高生女子向けの雑誌だから、表紙はモデルの女の子だけど、北斗も『今角 北斗クン、グラビア特集!』と、カットが載って紹介されていた。
 美波はいつも、雑誌やスマホの中で北斗を見るたびに、なんだか不思議な気持ちになるのだった。
 自分の知っている北斗であり、そうでない存在でもあるので。
 美波にとって北斗は幼なじみで、先輩で。とても身近なひとだ。
 秘密のことだが、今は家族ですらある。
 でもほかの女の子は、北斗は雑誌やスマホの中だけの顔しか知らないのだ。
 学校の子は『今角先輩』として、別の顔も少しは知っているだろうけれど、全国にいるだろう普通の女の子のファンは、とりあえずきっと知らないこと。
 そう思うとやはり不思議である。
 北斗が何人もいるようだ、と思って。
「あ、ねぇ! 今度『デート特集』だってよ!?」
 そのとき、あずみが大きな声を上げた。
 デート特集?
 雑誌に視線は向けていたものの、なんとなく考え事をしてしまっていた美波は、そこでやっと雑誌をしっかり見た。