葉山麗は小学6年生のとき両親の離婚でアメリカに引っ越したと聞いた。
それから4年、今度は月宮麗としてまさか再会するなんて夢にも思っていなかった。
しかも「許さない」って、一体何の事だろう?

「…ちる、みちる?」

お昼休み中、屋上で蓮とお昼を食べていた時だった。
あまりにも上の空だった私を蓮が心配そうな顔で見ていた。

「ごめん、ボーッとしてた」

ここは何故かあまり人気がなく、静かにお昼を食べられる私と蓮のお気に入りスポットだった。
いつもは今日あった出来事などを二人で話すのだが、私はずっと葉山の言葉の意味を考えていた。

「今日、何かあった?」

「え?いや別に」

その言葉に思わず、ドキッとしてしまう。
もし蓮をいじめていた葉山がこっちに帰ってきたと知ったら、余計な心配をさせてしまうかもしれない。
だから嘘をついたのに。

「うそ。絶対何か隠してるでしょ」

何故か蓮には直ぐにバレてしまう。
寄っかかっていたコンクリートの壁に両手をつかれ、逃げられないよう閉じ込められる。
至近距離で蓮に見つめられ、目を逸らすこともできない。

「何もないよ!」

「ほんとに?」

「ほんとだから!」

「じゃあちゃんと俺の目を見て。今は俺のことだけ考えて」

吸い込まれそうなくらい、こちらを真っ直ぐ見つめる黒い瞳。
ドキドキと心臓の音がうるさいくらい鳴り響く中、ゆっくりと蓮の顔が近づいてきてー。

キーンコーンカーンコーン。

ちょうどよくお昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り、咄嗟に立ち上がる。
その拍子に頭が蓮の顎にクリティカルヒットしてしまった。

「ご、ごめん!大丈夫!?」

「うん…大丈夫。次体育でしょ?いってらっしゃい」

顎に重症を負った蓮に見送られ、屋上を後にする。
蓮には悪いけど、葉山のことは私一人で解決するしかない。
だって蓮は私の大切な幼馴染だから。
私が蓮を守るんだ!と密かに決意する。

それが裏目に出るとは、この時思いもしなかったー。