「イギリスに行くまでに英語での日常会話を覚えて。いろんな習い事させられていたけれど、どれも、少しやればできるようになって。すぐに飽きちゃってさ」
どんな園児だよ。
天才ってこういう人間のことさす言葉なんだろうけど、なんか腹立つわ。
「そんなとき。きみに出会った」
幼稚園の頃の記憶なんて曖昧だ。
たしか、家から近いって理由だけで親が私立を選んだんだよな。
「……なにぐみ?」
「青組」
「ぜんぜん覚えてない」
アルバムとか探せば家にあるのかな。
え、ニシサカそこに写ってんの?
さぞかし美少年だろうな。
「ボクは、覚えてる。忘れたことない」
それほどインパクト残るようなこと、あったっけ。
「シホのどこに惚れたの~?」
聞かなくていーよ、リオ。
「そうだな。やっぱり。ナイフみたいなところ……かな」
ん?
「神崎さんはね。ボクのことを否定してくれた、たった一人の女の子なんだ」


