世にも歪な恋物語



 ――住む世界がちがうひと


 そんなことは、わかってるんだ。


 わたし、心くんに甘えてた。

 心くんの優しさに。


 わたしがしっかりしていたら、心くんは、もっと他の子と話せる。

 何度も気にかけてもらわなくて済んだ。


「みーちゃん」


 帰り際、誰もいなくなった下足場で、声をかけられた。

 振り返るまでもなく、わかる。


 うしろに立っているのは心くんだと。


 声で、わかるの。

 そんな呼び方をするのも、わたしを優しく呼んでくれるのも、心くんだけ。


「僕に、かくしてること。あるんとちゃう」


 気づかれてる?

 わたしの最近の、異変に。


「……なにも――」
「あるやろ」


 真剣な眼差しで、じっと見つめられる。


「頼ってや。もっと。僕のこと」
「でき、ない」
「なんで?」


 期待、したくないから。


 これ以上優しくされると、クラスメイト以上を、求めてしまいそうだから。


 いけないのに。

 あなたとわたしじゃ、光と影。


「僕。頼りない?」


 ――――ちがう


 心くんは、いつだって、助けてくれた。


 今も歩み寄ってくれている。


 すごく、頼もしい。