世にも歪な恋物語


「たとえば。あの。魔法学校が、出てくるような……」


 言いかけて、今のは子供っぽかったかな、とハッとする。


 かといって太宰治や夏目漱石のような文豪の書いたものを読んでいると背伸びしたところで、ボロが出ても困るのだけれど。


「オススメの教えて」
「え?」
「朝読で読むから。貸して」


 えぇええ!?


「今のが読み終わりそうで。次、なににするか迷っててん」


 わたしの趣味全開な本を、心くんが、読むの?


「……気に入ってもらえるか、どうか」
「それは問題ないわ」


 問題ない……の?


 固まるわたしに、心くんが、にっこり微笑みかけてくれる。

 死んじゃう。尊すぎる。

 今の顔、写真に撮って、ホーム画面にして一日何回も眺めたい。
 プリントして自室の机にだって飾りたい。
 生徒手帳に挟みたい。

 ……待て。
 発想がストーカーのそれだな、わたし。
 平常心、平常心。

 推しとちがって心くんのグッズなんて存在しない。作っちゃいけない。


「僕、みーちゃんの好きなものなら。なんでも興味あるんよ」