「ねぇ、芽衣。まだ俺のこと名前で呼んでくれないの?俺、ずっと待ってるのに」

「いいよ。名前呼び。で、結城くんの下の名前ってなんだっけ?」

私はさっきバカって言われた仕返しに、意地悪くそんなことを言ってみた。

「はぁ~。マジか。俺、今凄い衝撃を受けたわ。ここまで芽衣がお馬鹿さんだったとは」

「なっ!!!酷い!覚えてるよ、和真でしょ!」

「・・・・。」

あれ?和真で合ってるよね?まさかの間違い?

うわっ!人の名前を間違えるなんて。最低だ、私。

「か、ずま・・・だよね?」

「俺、ヤバい。芽衣が言う和真って」

やっぱり和真で合ってるんじゃん!驚かさないでよ。

「何わけ分からない事言ってるの?和真?」

和真はそれ以上何も答えてくれなくて、少し赤くなった顔を隠すように下を向いて、私から目線を逸らした。


以前、和真のお友達2人が言っていたことを思い出す。

『和真は女の子に対して優しくないし、話し掛けないんだよ。しかも下の名前で女の子を呼ぶなんて、考えられない』

あのお友達の話って、嘘だよね。普通に話し掛けてくれるし、一緒に笑ってくれるよね。それに私のこと初対面の時から『芽衣』って呼んでたし。