「恋人の顔なら、はっきりわかる。……僕には見えてたよ。悠が僕を求めてる表情。もっと触ってほしいって何度も顔でオネダリしてたよね」

「恥ずかしいからそれ以上言わないでください」


「ごめん。だけど残念なのが1つ」

「?」


「コスプレカフェで着てた衣装、買い取りたかった」

「どうしてですか?」


「悠にもう一度着させるため。次は僕だけの前で着てほしいから」


試着だけで良かったとホッと安堵の声を漏らしたのもつかの間。


「お金はあるんだし僕が買うのも良いかもね。悠、着てくれる?」

「コ、コスプレはしばらく無しの方向でお願いします……」


黒歴史の1つにカウントされるであろう例のセリフ。

コスプレだけはもうこりごり……。


紅蓮先輩の執事服はかなり似合ってたからそれだけは良かったな。

イケメンだから完璧に着こなせてたし、こっちは色んな意味で心臓がヤバかったけど。


こうして、ハラハラな映画館とドキドキなコスプレカフェデートは幕を閉じたのだった。