「こうでもしないと僕は流架に勝てない」

「失礼な質問かもしれないんですけど、一条君ってそんなに文才があるんですか?」


「あるよ。まだ作家デビューしてないけど流架は僕以上に輝くものを持ってる」


プロのマンガ家である紅蓮先輩がいうから間違いない。でも紅蓮先輩だって負けてない。


「一条君の書いたのはまだ読んだことないですけど……。紅蓮先輩の描いたマンガは面白いです。あんなキュンキュンするようなものを思いつく紅蓮先輩は天才です! きっと今回の勝負だって大丈夫ですよ」

「僕は天才じゃない……」


「え?」

「まわりからそう見えてるだけで本当は違う。陰では血の滲むような努力をしてきた。それは流架も同じだと思う」


「一条君が紅蓮先輩と同じ、ですか?」


一条君は暇な時間に小説を書いてたら有名になったって話してたけど……。


「そうだよ。流架は気が付いたらいつの間にか人気になってたと言ってたけど、文章を書くのは他人が思ってるよりもずっと難しい」

「……そう、ですよね」


私は一条君が小説を書いてることを知っても「凄い!」って小学生みたいな感想しか出てこなかった。


だけど色んな経験を積んでプロになった紅蓮先輩は私とは違う。


見えない場所で努力をしてデビューした紅蓮先輩だからこそ一条君の考えてることや置かれてる立場がわかったりするんだ。