「……悠ちゃんって変わってるね。だけど俺に本気になった相手とは普通にしてるよ、そういうこと」

「彼氏のことしか男の人のことわからないけど……お、おかしくはないと思う」


「素直に気持ち悪いって言えばいいのに」

「気持ち悪くない。あと、ありがとう。私に男の人の怖さを教えてくれて」


「お礼なんていらないよ。こんなの、君の彼氏にバレたら殺されちゃうし」

「大丈夫、言ったりしないから。もしバレたとしても私は何もされてないっていう」


ほら、やっぱり襲う気なんてなかった。

それに心なしか申し訳なさそうな顔をしてるし。


「一条君、私は一人でも帰れるから」

「でも危険だよ……!」


「大丈夫だよ。あ、でも一条君は自分を大切にしてね」

「え? なんで俺?」


「本当に好きな人が出来た時にそんな態度を取ったら、それこそ嫌われちゃうから」

「……」


「本当の一条君はとっても、ううん……すっごく優しい性格なんだと思う。あ、パフェご馳走様。値段がわからないから、このくらい置いておくね。じゃあまたどこかで」


私は千円札を一枚テーブルに置くとその部屋から出た。


「カッコいいっていうのは言われ慣れてるけど優しいっていわれたのは君が初めてだよ。星屑悠……名前は覚えたよ」


一条君が独り言のように呟いた言葉。

それはカフェを出た私には聞こえなかった。