5時間だけのメイド服

 なんとか唯子の攻撃を逃れて、唯人君と一緒に階段を上っている。

 「ごめんね。ちょっと、人見知りでさ」

 「ん?」

 人見知りというのは、一般的には、人と話すのが苦手とか、恥ずかしがり屋とか、そういうことじゃない? あれは、まあ確かに人と話すのは苦手そうだけれど、恥ずかしがり屋という感じは一切しなかった。ただの攻撃的な問題児だ。

 「唯子。どうも、人とうまく接することができなくて」

 「ああ……」

 まあ確かにそんな感じはするけど、とは、思うだけに留めた。

 「根は悪い子じゃないんだよ」

 「うん……。大丈夫、大丈夫。気にしてないから」

 「本当にごめんね」と、唯人君はのんびり言う。

 「ここが健人の部屋」と、彼は足を止めた。

 唯人君にお礼を言って、わたしは扉を三度、叩いた。

 「はーい」と暢気な声が返ってきて、わたしは扉を開けた。