「大葉千切り係、立候補者は?」

 健人の声に、「はーい」と唯人君が手を挙げた。

 「じゃあ、玉ねぎのみじん切りもお願いしていいかな」

 「粗みじんじゃだめ?」

 「ああ、それもいいね」

 「ちょっと大きいくらいの方が美味しいもんね」

 わたしが言うと、唯人君は「ねー」と目を細めた。

 「じゃあ唯子には、キャベツを細かく切ってもらおうかな」

 健人がキャベツを差し出すと、唯子はこくんと頷いてそれを受け取った。

 「キャベツも粗みじんくらいでいいよ」

 「で、健兄はなにするの?」唯人君が言った。

 「おれは皮作り」

 「買ったんじゃないの?」

 「どうせじゃあ作った方が面白いじゃない」

 「まあ、確かにね」

 「皮」と唯子が呟いた。

 「強力粉と薄力粉と熱湯で作れるんだよ」と話す健人は、まさに優しいお兄ちゃん。優しいオーラにふんわりと包まれた彼は、少しかっこよく見える。といっても普段から見た目はかっこいいんだけど、そうじゃなくて、もっと素敵に見える。

 「すごい根気が必要だけどね」と健人は笑う。