わたしはなんとか呼吸を整えると、お腹が少し痛む中、「今日はなににする?」と、誰に、というわけでもなく言った。

 「はーい」と手を挙げたのは、唯人君。「僕チャーハン食べたい」と、のんびり続く。

 「ほう、チャーハンか。いいね。味付けはどういうのがお好みで?」

 「なんでも好き。相川さんのチャーハン、食べてみたい」

 「了解」と答えて、わたしは頭を働かせた。どうせなら梅干しも使いたいけれど、わたし自身、そういうチャーハンと食べたことがないので、どう作るべきかわからない。そもそも、チャーハンと梅って合うのかな。酸っぱいチャーハンってことだよね?

 わたしは健人に視線を投げた。

 「健人は? なにか好きな食べ物ないの?」

 「オムライス」と短く返ってくる。

 「じゃあ、苦手なのは?」

 「堅苦しいもの」

 「……堅苦しいごはんってある?」本当、堅苦しいごはんってなんだ?

 「健兄はお寿司とか苦手だよ」と唯人君。「あとはすごいステーキとか」

 「ふうん」と頷いたけれど、すごくないステーキがわからない。けれど仕方ない、お寿司が堅苦しいというのがわからないんだから。

 ……まさか、ここで言うお寿司は回らないやつのこと⁉ あの、お店の味がわかるとかで、一番最初に玉子焼きを食べなきゃいけないっていう暗黙のルールがあるやつのこと⁉ なるほど、それならまあ、堅苦しい。