扉の閉まる音を合図に一人きりになった部屋を見渡して、わたしは深く息をついた。
「ざっけんなパワーアップしてんじゃねえか……」
今回用意されていたのは、膝上丈の黒いワンピースに深い青のネクタイ、といったようなもので、なんだ落ち着いてきたじゃない、と一瞬思ったのだけれど、それがかかっているハンガーには、ネクタイと同じ色のフリルのカチューシャが引っかかっていた。
なによ、普通のメイド服じゃ飽き足らないって言うの? でもこんなものを身に着けるのはわたしじゃなくない? いいじゃない、唯子にでも着てもらえば。実際、唯子にも同じものを着せているんだから。
こんなものにも、渋々と言えど袖を通すわたし。サービス精神が旺盛とでも言い換えれば聞こえはいいけれど、いよいよ意志の弱さが自分でも心配になってくる。
「でもさあ……」
こんなの着ない、とか言ったら、絶対、あの糸のような目を“細く”して、なにか脅し文句を差し出してくるに違いない。そう、彼の場合、脅し文句は吐くものではなく、丁寧に差し出すもの。ごめんなさいと受け取るも、ふざけんなとはじき飛ばすもわたし次第、けれどそのどちらを選んでも、最終的には爆発する仕掛け、といった具合。
「目に見えてるんだよ、それが」
ぽつぽつと独り言をこぼして、わたしはカチューシャを着けた。そのうち、猫耳のカチューシャが用意されるに違いない。フリル程度の“シンプルな恰好”も楽しんでおくべきかもしれない。
「ざっけんなパワーアップしてんじゃねえか……」
今回用意されていたのは、膝上丈の黒いワンピースに深い青のネクタイ、といったようなもので、なんだ落ち着いてきたじゃない、と一瞬思ったのだけれど、それがかかっているハンガーには、ネクタイと同じ色のフリルのカチューシャが引っかかっていた。
なによ、普通のメイド服じゃ飽き足らないって言うの? でもこんなものを身に着けるのはわたしじゃなくない? いいじゃない、唯子にでも着てもらえば。実際、唯子にも同じものを着せているんだから。
こんなものにも、渋々と言えど袖を通すわたし。サービス精神が旺盛とでも言い換えれば聞こえはいいけれど、いよいよ意志の弱さが自分でも心配になってくる。
「でもさあ……」
こんなの着ない、とか言ったら、絶対、あの糸のような目を“細く”して、なにか脅し文句を差し出してくるに違いない。そう、彼の場合、脅し文句は吐くものではなく、丁寧に差し出すもの。ごめんなさいと受け取るも、ふざけんなとはじき飛ばすもわたし次第、けれどそのどちらを選んでも、最終的には爆発する仕掛け、といった具合。
「目に見えてるんだよ、それが」
ぽつぽつと独り言をこぼして、わたしはカチューシャを着けた。そのうち、猫耳のカチューシャが用意されるに違いない。フリル程度の“シンプルな恰好”も楽しんでおくべきかもしれない。



