梅と大葉とささみの天ぷらを主菜として、副菜には、ありったけきのこのバター炒め、生姜とごま油のたたききゅうりを作った。汁物は、たまごと梅干しのスープ。粉末のたまねぎスープがあったので、それを溶いたお湯に、溶きたまごを入れて、お椀一杯に一粒、梅干しを入れた。

 「相川さんすごい。梅干しを使った料理って、結構あるんだね」

 「全部思い付きだけどね。個人的には、梅干しは大葉とくっつけておけば大体美味しくなると思ってる」

 「それが実際美味しいんだよ」と、唯人君は楽しそうに頷く。

 食事を初めてから、わたしは唯子へ目を向けた。あの試合から、かなり大人しい。

 ふと目が合って、そうしてしまえばいつも通りだった。なに、とでも低い声を発するように、目の奥に鋭い光が宿る。

 「あっ、天ぷらうまい!」と唯人君が声を上げる。

 「どっちがお好み?」

 「どっちも美味しい」

 「本当、それはよかった」

 「相川さんすごいね。ファミレスで働いてたんだっけ?」

 さらりと言われて、ぎくりとする。わたしは健人を見た。彼はいたずらっぽく笑う。

 「あんた本当に口軽いわね。本当に先生には言ってないんでしょうね」

 「言ってないよ。そうするより先に、ここへ来てくれた」

 「あんた本当に性格悪いよね」

 「そんな正確に指摘しなくても」と笑う健人へ、一拍置いて、「ちょっと待って」と返す。唯人君がぷっと噴き出した。

 「え、なに、偶然? 意図的なもの?」

 「さあ。偶然なんじゃないか? おれはこんなに悠然としている」

 重ねてきた――!と思っていると、唯人君が耐えられないという様子で、声を出して笑った。

 「え、笑えるところなの?」

 「相川さん、強いね」と、彼は笑いながら言う。

 なんだかわたしがおかしいような気がしてくるけれど、たぶんそんなことはない。唯子も笑っていないし、大丈夫だ、きっと。

 大丈夫大丈夫、と自分に言い聞かせて、わたしは天ぷらをかじった。おお、結構美味しい。