「唯子はかなり内気でね」

 「ほう……」

 内気、ねえ……。

 「人と話すのが得意じゃないもんで、学校でもあまり話さないんだそうだ。でもそれは、周りの人には珍しく見えた。……珍しいっていうのは、自分の知っているものとは違うという感覚から抱くものだと思うんだ。それは、やがて、恐怖心を煽るようになる」

 「……ん?」

 あまり難しい言い方しないでほしいんだけど……。

 「人間、自分と違うものって怖いものでしょう?」

 「うーん……そう?」

 「例えば、突然異世界に飛ばされたとしたら、怖いじゃない」

 「ええ、そうかなあ。楽しそうだと思うけど」

 わたしが言うと、健人は悲しそうな笑みを浮かべた。

 「相川さんみたいな人が、唯子のクラスにいてくれたならよかったんだけどね」

 「え、そう? へへっ、照れるなあ」

 わたしはへらへら笑って、首の後ろを掻いてみた。

 「でも、実際にはいなかったみたいでね。不気味とか、怖いとか、あれこれ言われたそうだ」

 「そっか……」

 それに、気づかないふりをしていたんだ。

 「それで、疲れちゃったんだね」

 健人は黙って頷いた。

 「同時に、人を怖がるようになった」

 「恐怖心は伝染するって言うしね」

 うん、と言った彼の声と表情は複雑なものだった。的外れなことを言った、とすぐにわかった。――これはこれは、失礼しました。