唯人君が「始め!」と、よく通る声を上げて、試合が始まった。唯人君が五分間のタイマーを設定した携帯電話を端に置いている間に、唯子がボールを打ち付けて、いい音を鳴らす。その姿が妙に様になっていて、危うく怯みそうになる。
「できることなら、この勝負、勝ちたい」
不意に、微かに聞こえた健人の力強い声で、わたしはその恐怖心を拭った。わたしだって、勝負というのなら勝ちたい。負けるよりも勝つ方が気分がいいもの。
姿勢を低くして、ボールを打ち付けながら突っ込んでくる唯子の手元から目を離さず、わたしは彼女の到来を待った。ちょうどいいところまで来たら、あの手からボールを奪い、ちょいとあちらのコートにお邪魔して、ひょいとゴールにボールを投げ入れてくればいい。幸い、わたしはごみをごみ箱へ投げ入れるのがとても得意だ。
「さあ、来なさい……」
「後ろから援護するよ」と健人。「安心して。一度取ってくれれば、絶対こっちの点にするから」
――なになに、ずいぶん頼りになるじゃないの。心強いわ。
唯子はスピードで撒こうとしているようで、あっという間にそばへ来た。わたしはぎりぎりまで動かずにいて、もう後ろへ行ってしまうという頃に、さっと手を伸ばした。少し触れれば、ボールは頼りなくこちらに転がり、それを手で隠すようにして、地面に打ち付けながら、相手のコートへ飛び込む。
しかし、ここで邪魔なのが唯人君だ。一人の男性として見れば、特別に長身というわけではないけれど、わたしと比べれば十センチほど差がある。バスケットボールなんて詳しくは知らないけれど、身長が高い方が有利だということくらいは知っている。
でも――。
考えたって仕方ない。考えたところで、この瞬間にぐんっと背が伸びるわけじゃない。だったら、小さいなりに、大きい相手を翻弄するのみ。
わたしは、どっしりと構えている唯人君の脇をくぐるように姿勢を低くして、地面を思い切り蹴った。
早く、ゴールのそばへ――。
わたしはゴールが見えると、一気に背筋を伸ばして、力の限り、上へ飛んだ。限界まで腕を伸ばす。入れ、入れと願ってボールを放つ。
ぽんっと上がったボールは、ゴールに吸い寄せられるような軌道を描く。
これはいける――!
「できることなら、この勝負、勝ちたい」
不意に、微かに聞こえた健人の力強い声で、わたしはその恐怖心を拭った。わたしだって、勝負というのなら勝ちたい。負けるよりも勝つ方が気分がいいもの。
姿勢を低くして、ボールを打ち付けながら突っ込んでくる唯子の手元から目を離さず、わたしは彼女の到来を待った。ちょうどいいところまで来たら、あの手からボールを奪い、ちょいとあちらのコートにお邪魔して、ひょいとゴールにボールを投げ入れてくればいい。幸い、わたしはごみをごみ箱へ投げ入れるのがとても得意だ。
「さあ、来なさい……」
「後ろから援護するよ」と健人。「安心して。一度取ってくれれば、絶対こっちの点にするから」
――なになに、ずいぶん頼りになるじゃないの。心強いわ。
唯子はスピードで撒こうとしているようで、あっという間にそばへ来た。わたしはぎりぎりまで動かずにいて、もう後ろへ行ってしまうという頃に、さっと手を伸ばした。少し触れれば、ボールは頼りなくこちらに転がり、それを手で隠すようにして、地面に打ち付けながら、相手のコートへ飛び込む。
しかし、ここで邪魔なのが唯人君だ。一人の男性として見れば、特別に長身というわけではないけれど、わたしと比べれば十センチほど差がある。バスケットボールなんて詳しくは知らないけれど、身長が高い方が有利だということくらいは知っている。
でも――。
考えたって仕方ない。考えたところで、この瞬間にぐんっと背が伸びるわけじゃない。だったら、小さいなりに、大きい相手を翻弄するのみ。
わたしは、どっしりと構えている唯人君の脇をくぐるように姿勢を低くして、地面を思い切り蹴った。
早く、ゴールのそばへ――。
わたしはゴールが見えると、一気に背筋を伸ばして、力の限り、上へ飛んだ。限界まで腕を伸ばす。入れ、入れと願ってボールを放つ。
ぽんっと上がったボールは、ゴールに吸い寄せられるような軌道を描く。
これはいける――!



