結局、他人の部屋の棚を漁るのは気が引けて、部屋中、目に見えるところを探して、諦めた。
「だからサイズぴったりなのやめてよ……」
気持ち悪いから。
部屋を出ると、健人はぱあっと表情を明るくした。
「うんうん、やっぱり似合うね!」
「うるせえ、黙れ」
「そう怒らないでよ。よく似合ってるよ?」
「怒るだろうが、普通。お金も足りてないし、昨日の」
「ええ、一日五千円って話だったでしょう?」
「そうじゃない! 一日五時間で、五千円って話だったでしょう? 時給千円。でも昨日はどう? 五時間よりも長い時間いたよね? それで五千円っておかしくないかってこと!」
「ぼく算数わかんない」と首を傾げる健人へ、「ふざけんな」と思い切り拳を飛ばした。危うくお腹へ飛ばすところだったけれど、直前で二の腕へ狙いを変えた。
「暴力はよくないよ?」と、彼はわたしに殴られた腕をさすって言う。
「そういうタイプの正当防衛だ」と無理に返すと、「過剰防衛っていう言葉があるんだよ」と返ってきたので、「算数はだめでも公民は得意なのね」と返した。
「だからサイズぴったりなのやめてよ……」
気持ち悪いから。
部屋を出ると、健人はぱあっと表情を明るくした。
「うんうん、やっぱり似合うね!」
「うるせえ、黙れ」
「そう怒らないでよ。よく似合ってるよ?」
「怒るだろうが、普通。お金も足りてないし、昨日の」
「ええ、一日五千円って話だったでしょう?」
「そうじゃない! 一日五時間で、五千円って話だったでしょう? 時給千円。でも昨日はどう? 五時間よりも長い時間いたよね? それで五千円っておかしくないかってこと!」
「ぼく算数わかんない」と首を傾げる健人へ、「ふざけんな」と思い切り拳を飛ばした。危うくお腹へ飛ばすところだったけれど、直前で二の腕へ狙いを変えた。
「暴力はよくないよ?」と、彼はわたしに殴られた腕をさすって言う。
「そういうタイプの正当防衛だ」と無理に返すと、「過剰防衛っていう言葉があるんだよ」と返ってきたので、「算数はだめでも公民は得意なのね」と返した。



