「お茶入ったよー」と、のんびりした声とともに、唯人君が台所から出てきた。お盆を持っていて、お洒落なティーカップと、ころんとした形のグラスが載っている。

 「相川さんはお砂糖入れる人?」

 「え、あ、いや……」

 どうしよう、入れておいた方が飲みやすいのかな。いや、でも甘ければいいというものでもない。変な甘みを足したがためにより飲みにくくなるという可能性も……。

 唯人君はふわりと微笑む。「ソーサーに載せておいたから、好きに使ってね」
 
 「ああ、うん、ありがとう……」

 だめだ、アッサムってなに? ストレートってなに。まっすぐ? 曲がったアッサムってなに? いや、だからアッサムってなに。どんなお茶なわけ?

 昔、植物を煮詰めるかなにかして、その成分を引き出したものはすべてお茶だ、みたいなことを聞いたことがある。本当、アッサムってなんなんだろう。だめだ、怖くなってきた……。

 「座ってよ」と唯人君は優しく言う。

 失礼します、と聞こえない声で言って、わたしはダイニングチェアの一つに腰かけた。唯人君が、前にカップの載った小皿を置いてくれる。お礼を言うと、彼はただ優しく微笑んだ。

 唯人君はソファへ近づくと、「はい」と、ころんとしたグラスを唯子へ渡した。中の液体がゆらりと揺れる。

 健人は優しく唯子の頭をなでると、唯人君からカップの載った小皿を受け取って、唯子の隣に腰かけた。

 そして唯人君は、こちらへ戻ってくると、わたしと向き合う位置に着いた。かちゃり、と、彼のカップがテーブルに置かれる。