5時間だけのメイド服

 大葉を千切りにして、トッピング用に適量取り分けて、残りをボウルに入れた。唯人君たちが下準備してくれたツナと梅干も加える。そして、醤油を垂らす。

 「醤油はどれくらい?」と言う唯人君へ、「正直、勘」と言った直後、背中が寒くなった。ええお嬢様、冗談ですよ。

 「えっと、小さじ二杯分くらいかな」

 「へええ」

 「そんで、ごま油」

 「ごま油は?」

 勘、と言おうとしたけれど、背中を駆け抜ける冷たさが蘇って、言葉を飲み込んだ。

 「醤油と同じくらいかな。まあ、お好みで調節してみて」

 「はーい」

 「で、これを和える」

 「菜箸」と健人に差し出されたそれを受け取って、「トングの方がよかった?」と言う彼に「大丈夫」と答えて、ボウルの中身を混ぜる。

 「そんで」と言ったちょうどそのとき、タイマーが、パスタが茹で上がったと知らせた。

 「パスタはどうする? 夏だし、冷製パスタにする?」

 誰に、というわけでもなく、言ってみた。

 「冷やそうか」と唯人君。

 「よし。それじゃあ、ざるにあけてギンギンに」

 「氷も使う?」と言う唯人君に、「夏だしね」と健人。

 健人が流しでパスタを冷やしている間に、唯人君が冷凍庫から氷を取り出す。

 冷やしたパスタを、調味料などを混ぜたボウルで、その中身と混ぜて、お皿に盛る。取り分けておいた残りの大葉を散らして――。

 「完成!」

 健人と唯人君が、「おおー」と声を重ねる。