真ん中の台は、なにやら収納スペースになっているらしく、健人は側面についている取っ手を引いた。中から、三つパックのツナ缶を取り出す。よかった、こんな豪邸にも、ツナ缶は置いてありました。
「あと、醤油とごま油。なにより梅干しね。あとは大葉もあると、みんなの好みに合うかもしれない」
「オーケー」と、唯人君の気の抜けた声が言う。
「全部あるよ」と健人。
「完璧だね。よし、じゃあ作っていきますよ!」
ファミレスでの経験は一つも活かせてなさそうだけど、まあ、いいでしょう。そういうのは次から、次から。
「パスタを茹でます」
「はい!」と健人。なんだこの人、意外とかわいげあるじゃないか。唯子が引き立てているのだろうか。
「じゃあ、唯人君はツナの水気を切っといて。汁気っていうのかな」
「はーい」
「あと、梅干しを細かくしといて。手でちぎる程度でいいよ、洗い物出ちゃうから」
「了解でーす」
「じゃあ、唯子ちゃんは――」わたしが指示を出すよりも先に、唯子は唯人君のそばに駆け寄った。はいはい、大葉の千切りはわたしがやりますよ。
「わたし、やる」と、やわらかい声を出す。なんだよ、かわいい声も出るんじゃないか。
「わあ、ありがとー」と、唯人君もまた優しい声を返す。
あれ、もしやこの家は、わたしがいなければ平和なんじゃないか?
「ところで、大葉は?」
「ああ」と答えた唯人君が、「痛いっ」と声を漏らす。唯子お嬢様に殴られたりしたのだろう。あの女に近づくな、あんな女は放っておけ、と。
「冷蔵庫にあるはずだよ」と言ったのは健人。彼の振り返る先には、大きな冷蔵庫。厨房ですか、ここは。
健斗は取っ手を引いて扉を開けると、中を覗き込んで、「おお、あった」と、白い紙のようなものの入った保存袋を取り出す。いつか、大葉は、濡らしたキッチンペーパーに包んで、保存袋に入れて保存するものだと聞いたことがある。
「ほいっ」と投げられたそれを、わたしは受け取った。
「ナイスキャッチ」と、健人は無邪気な笑みを見せる。
「あと、醤油とごま油。なにより梅干しね。あとは大葉もあると、みんなの好みに合うかもしれない」
「オーケー」と、唯人君の気の抜けた声が言う。
「全部あるよ」と健人。
「完璧だね。よし、じゃあ作っていきますよ!」
ファミレスでの経験は一つも活かせてなさそうだけど、まあ、いいでしょう。そういうのは次から、次から。
「パスタを茹でます」
「はい!」と健人。なんだこの人、意外とかわいげあるじゃないか。唯子が引き立てているのだろうか。
「じゃあ、唯人君はツナの水気を切っといて。汁気っていうのかな」
「はーい」
「あと、梅干しを細かくしといて。手でちぎる程度でいいよ、洗い物出ちゃうから」
「了解でーす」
「じゃあ、唯子ちゃんは――」わたしが指示を出すよりも先に、唯子は唯人君のそばに駆け寄った。はいはい、大葉の千切りはわたしがやりますよ。
「わたし、やる」と、やわらかい声を出す。なんだよ、かわいい声も出るんじゃないか。
「わあ、ありがとー」と、唯人君もまた優しい声を返す。
あれ、もしやこの家は、わたしがいなければ平和なんじゃないか?
「ところで、大葉は?」
「ああ」と答えた唯人君が、「痛いっ」と声を漏らす。唯子お嬢様に殴られたりしたのだろう。あの女に近づくな、あんな女は放っておけ、と。
「冷蔵庫にあるはずだよ」と言ったのは健人。彼の振り返る先には、大きな冷蔵庫。厨房ですか、ここは。
健斗は取っ手を引いて扉を開けると、中を覗き込んで、「おお、あった」と、白い紙のようなものの入った保存袋を取り出す。いつか、大葉は、濡らしたキッチンペーパーに包んで、保存袋に入れて保存するものだと聞いたことがある。
「ほいっ」と投げられたそれを、わたしは受け取った。
「ナイスキャッチ」と、健人は無邪気な笑みを見せる。



