部屋は、思ったよりも普通だった。右側にベッドがあって、左側に机があって、正面にそう大きくないテレビがあって。
「やあ、相川さん」と、健人は暢気に言う。
「いいわね、暢気で」
「失礼しちゃうなあ」と、気楽に笑う。
「おれはおれなりに忙しかったんだよ。あれこれ考えてたんだから」
「なにを」
「相川さんになにを着てもらおうかなあって」
「着るって、なにを?」
「制服だよ。私服を汚すわけにはいかないでしょう? 今までの仕事場でもあったでしょう」
「あったけど……。なに、わざわざ用意してくれたの?……わたし、こう見えて結構、豊満なボディなんだけど。着痩せするタイプなんだけど」
男子というのは、時に恐ろしいもの。女子という存在に変な夢を抱いて、子供用みたいに小さな服を用意している可能性もある。
「大丈夫さ! ぴったりなはずだよ」
「気持ち悪いよ! 全然だいじょばないんだけど」
「なにが問題かね? 大切な私服は汚れないし、制服のサイズも問題ない」
「そのサイズに問題ないのが問題なんだよ。気持ち悪い、なんで知ってんの」
「知ってるわけじゃないけども、大体こんなもんだろうと」
まあとりあえず着てごらん、と健人が出してきたのは、ふりふりなメイド服だった。
「誰がメイドじゃ!」
健人はしゅんとした顔をする。
「嫌かい?」
「誰が喜んで着るかい。馬鹿なの? なんでメイド服?」
「かわいいだろうと思って。相川さん、似合うと思うよ」
「似合う似合わないの問題じゃないんだよ。わたしの気持ちはなんでこうも置いてけぼり?」
「置いてけぼりだなんてそんな。どうだい、かわいいだろう?」
「しかも丈が短いんだって。なにこれ、セクハラ?」
「そんなに嫌なら……。まあ、唯人にでもあげるよ」
「は⁉」
「いや、だから唯子にでも……」
「ああ、唯子ね」
唯人って聞こえた……。なんだ、唯子にね。それなら問題ないか――ってちょっと待った。
「だめだめ!」
「おや、着てくれるかい?」
「えっ、いや、あ……」
そういうわけじゃないけれど、唯子にこんなものを渡したら、たぶん健人兄ちゃん、ズタボロにされる。
「まあ……あんたが無事でいられるなら……」
「無事? むしろおれは喜ぶよ。相川さんのメイド服姿を拝めるなんて」
「気持ち悪いんだよ!」
わたしは大げさにため息をついた。
「サイズ、ちょっとでも合わなかったら絶対着ないからね。新しいのとかそういうんじゃなくて着ないから。私服が汚れるとか、そんなヘマしないし、本当に必要だと思ったら自分で用意するから!」
ははは、と健人は愉快そうに笑う。
「よしよし。じゃあ一回、着てごらん」
「やあ、相川さん」と、健人は暢気に言う。
「いいわね、暢気で」
「失礼しちゃうなあ」と、気楽に笑う。
「おれはおれなりに忙しかったんだよ。あれこれ考えてたんだから」
「なにを」
「相川さんになにを着てもらおうかなあって」
「着るって、なにを?」
「制服だよ。私服を汚すわけにはいかないでしょう? 今までの仕事場でもあったでしょう」
「あったけど……。なに、わざわざ用意してくれたの?……わたし、こう見えて結構、豊満なボディなんだけど。着痩せするタイプなんだけど」
男子というのは、時に恐ろしいもの。女子という存在に変な夢を抱いて、子供用みたいに小さな服を用意している可能性もある。
「大丈夫さ! ぴったりなはずだよ」
「気持ち悪いよ! 全然だいじょばないんだけど」
「なにが問題かね? 大切な私服は汚れないし、制服のサイズも問題ない」
「そのサイズに問題ないのが問題なんだよ。気持ち悪い、なんで知ってんの」
「知ってるわけじゃないけども、大体こんなもんだろうと」
まあとりあえず着てごらん、と健人が出してきたのは、ふりふりなメイド服だった。
「誰がメイドじゃ!」
健人はしゅんとした顔をする。
「嫌かい?」
「誰が喜んで着るかい。馬鹿なの? なんでメイド服?」
「かわいいだろうと思って。相川さん、似合うと思うよ」
「似合う似合わないの問題じゃないんだよ。わたしの気持ちはなんでこうも置いてけぼり?」
「置いてけぼりだなんてそんな。どうだい、かわいいだろう?」
「しかも丈が短いんだって。なにこれ、セクハラ?」
「そんなに嫌なら……。まあ、唯人にでもあげるよ」
「は⁉」
「いや、だから唯子にでも……」
「ああ、唯子ね」
唯人って聞こえた……。なんだ、唯子にね。それなら問題ないか――ってちょっと待った。
「だめだめ!」
「おや、着てくれるかい?」
「えっ、いや、あ……」
そういうわけじゃないけれど、唯子にこんなものを渡したら、たぶん健人兄ちゃん、ズタボロにされる。
「まあ……あんたが無事でいられるなら……」
「無事? むしろおれは喜ぶよ。相川さんのメイド服姿を拝めるなんて」
「気持ち悪いんだよ!」
わたしは大げさにため息をついた。
「サイズ、ちょっとでも合わなかったら絶対着ないからね。新しいのとかそういうんじゃなくて着ないから。私服が汚れるとか、そんなヘマしないし、本当に必要だと思ったら自分で用意するから!」
ははは、と健人は愉快そうに笑う。
「よしよし。じゃあ一回、着てごらん」



