感動している間にも、ブツッと乱暴に電話を切られる。
シーンと静まり返ったボロ屋に、私の大きなため息が響き渡った。

「お父さん……どんな反応するんだろ。全く見当がつかない」

私のお父さん、結城(まもる)は、医者一家の三男で結城家具の一人娘……私のお母さんである真美子(まみこ)とお見合い結婚して婿養子に入った。
性格はよく言うと温厚で優しい、悪く言うと優柔不断。
人当たりはいいけど、社長としてみんなをまとめたり経営に関してはからっきしダメだった……というのが、今の結城家具の状況から見て取れる。
でも私はちょっと抜けたお父さんが好きだ。しっかり者のお母さんとつり合いが取れてるし。

(とはいえ、さすがのお父さんも怒るよね。ライバル会社で働いて社長と付き合ってるなんて知ったら)

お母さんが上手く伝えてくれるのを祈るばかり。
ただ私には、お父さんよりも強力な強力な! ラスボスがいるのだ。

「このままおじいちゃんに知られたら、即勘当だ」

結城家具会長のおじいちゃん……俊蔵(としぞう)は破天荒で頑固者、仕事命!
私の現状を知ったら雷が落ちるどころじゃなくて、地球が壊れるほどの『何か』を落とされそうだ。

(でも、社長と付き合っていく上で、絶対に話さなくちゃいけない)

気が重くなるけれど、きっと遠い未来の話じゃない。
覚悟を決めなくては……私はそう思うのだった。