淋れた魔法



みんなに慕われてるきみが何かの用事で初めて図書室に来た時、本当にびっくりした。

通ってくれるようになって、毎日、すごくどきどきしてた。

こんな時間が続くなら、わたしはきみの理想どおりになりたいとさえ思った。


初めて話したとき、名前を呼ばれたとき、どうしてか口説かれてるときも、いつも泣きそうになるほどうれしかった。



わたしをきれいに見てくれていること、うれしかったはずなのに。


きみの目に、わたしが欠片も映っていないことを、突き付けられた。

それは心のなかに濃いインクを垂らして、無残に広がって…つい八つ当たりのように、言ってしまった。



「…きみっていつも中途半端だね」


それはわたしが自分に一番言いたかった言葉だったのに。

──── 好きなひとを、傷つけた。


何も信じられないほどに。何にもがんばれないほどに、自分に自信がなかったせいだ。