空気は冷たいけれど、空は雲ひとつない晴天。空気が澄んでいるからか、空の青が濃くて、太陽の光が眩しい。


車に積んでいた必要最低限の荷物を持ち、エントランスのオートロックを解除して、エレベーターで最上階へ向かう。


角部屋のドアを開けると、玄関の先には三メートルほどの廊下。その先にある扉を開けると、左手にはコンロが三口ついている、十二畳のリビングが見渡せるキッチン。


南向きの角部屋というだけあって日当たりは抜群。白を基調とした清潔な空間は、初めて動画の撮影をしたスタジオとよく似ていた。


「1LDKくらいかなって思ってたけど、部屋ふたつあるんだね」


「撮影とか練習とか、音楽専用の部屋ほしかったからな」


郁也が言うには、スライド式の大きなドアで仕切られている、おそらく普通は寝室になるであろう六畳の部屋を音楽部屋にして、その隣にある開き戸の、同じく六畳の部屋を寝室にする予定とのことだった。


「ええー、寝室こっちがいい」


寝室にする予定の部屋は窓がひとつしかないし、位置的にも日当たりが悪そうだ。


こっち、と音楽部屋になる予定らしい日当たり抜群の部屋を指さすと、「寝室なんて寝るだけだから別にいいじゃん」と返された。


「ずっと、家で撮影できるようにしたかったんだよ。そしたらいつでも撮れるだろ」