君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



年が明けてしばらくすると、郁也は正式に札幌支社へ異動の辞令が出た。


「北海道!?」


錦三丁目の串カツ屋。


大人になれば、当然のように鉄板焼きやフレンチを好むようになるのかと思っていたけれど、好きなだけ食べて好きなだけ飲みたい私たちは、学生時代と変わらずコスパ重視でお店を選んでいる。


特に一軒目は飲み放題がついていることが最低条件。鉄板焼きやフレンチも憧れるけれど、変わらない自分たちに、少し安心する。


「え……大丈夫?」


左手に生ビールを持ったまま、眉間にしわを寄せて、上目遣いでおそるおそる私の顔を覗き込む。
学生時代よりも伸びて緩く巻かれた髪が、彩乃の肩からふらりと落ちた。


「大丈夫だよ。フミがいるし。結婚しようって言ってくれたから」


「えっ! おめでとう〜!!」


「ありがとう~!!」


ジョッキから手を離し、両手をがっしりと繋いで、ブンブンと大きく振った。


“結婚”なんて“いつか”の話で、ずっとずっと遠い未来のことだと思っていたのに、今はこんなにも近くに感じられるようになった。


まだまだ子供だと思っていたのに、私たちはいつの間にか大人になっていたのだと実感した。