「なあ、ユズ」
「ん?」
「ずっと考えてたんだけど」
「うん?」
「結婚しよっか」
ちゃんと言ってくれるんだ--。
「うん! する!」
迷う時間なんて一秒たりともなかった。初めて郁也の家庭環境を聞いた時から、漠然と考えていたから。
いつか郁也と結婚して、それで--。
「あったかいご飯作って、フミが帰ってきたら『おかえり』って言うよ。子供ができたら、休みの日は遊園地に行ったりキャッチボールしたり。そういうベタな、幸せな家庭、一緒に作ろう」
郁也が望む家庭を作ってあげたい。寂しい思いをしてきた分、幸せで埋め尽くしてあげたい。
「よくそんな話覚えてたな」
「覚えてるに決まってるじゃん」
「そっか。……ずっと一緒にいような」
両手を私の背中にまわし、そのまま引き寄せられる。
こみ上げてくる涙を目いっぱいに溜めて、郁也にぎゅうっと抱きついた。
「うん。ずっと一緒にいよう」
ずっと、一緒にいよう。これからもずっと、幸せを作っていこう。
郁也と出会ってから、想像する未来にはいつだって眩しいほどの光が差し込んでいて。
心から信じられるふたりの未来は、とても穏やかで優しいものだった。


