君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



“半”をつけていたのは、『一緒に住もう』と言われてもいないし、言ってもいなかったから。


でも郁也は付き合う時も『付き合ってるかと思ってた』とか言っていたし、同棲をするのにも特に言葉はいらないと思っているのかもしれない。


よし、今日から“半”は抜こう。


「あれ? 好きじゃない?」


「好きだけど……なんか、悲しすぎない?」


せっかく同棲しているのに、別れたあとの曲を歌うって、ちょっと悲しい。


でも付き合い始めてからも失恋ソングを歌うことは多いし、郁也はあまり歌詞の内容は気にしていないようだった。


私も前はあまり気にしていなくて、ただ好きな曲を歌い続けてきたのに、どうして気になるようになってしまったのだろう。


もしかしたらこの疑問も、“好きだから”で解決するのかもしれない。


「その悲しい気持ちで歌ったらいいじゃん」


悲しい気持ち、か。


失恋をしたことがあるはずなのに、今はもうその気持ちをよく思い出せない。


郁也が言った通り、私の記憶はほとんど郁也に塗り替えられているから。