君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



真夏の太陽は、窓を突き破りそうなほどに容赦なく照りつける。遮熱カーテンというバリアを失った室内は、じわじわと熱気に包まれていく。


夜の間にその役割を果たして油断しきっていたエアコンも、その熱気に負けじと慌てて冷気を大放出してはいるけれど、室内温度が下がることはなく、今のところ両者互角だ。


こんな暑さの中、よく寝ていられるな。私が出かける準備をしても洗濯しても郁也は全く動じることなく、布団にくるまったまま。


「フミ、起きてよ」


「んー……」


「今日出かける約束してたじゃん」


「ちょ、待って。昨日飲みすぎて……」


「調子に乗って朝方まで飲んでるからじゃん!」


「もうちょっと寝かせて……あ」


「もうお昼……あ。今フミが考えてることわかった」


「『日曜日』」


声が重なって、同時にフッと吹き出した。


何気ない日常の会話の中で、こんなにも音楽の話が自然と出てくるようになっていて。私も郁也につられていつの間にか音楽バカになってしまった。


「次は『日曜日』だな」


「歌いたい! 大好き!」


やっと起き上がった郁也は、布団の上で大きく伸びをした。先ほど目をそらした太陽を見つめて、目を細めながら「今日も暑いな」と眉を八の字にして笑った。