君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



このまま眠ったら気持ちいいだろうなと思うのに、郁也はスマホを置いて私の手を取ると、指を絡めてぎゅっと握るから、回らない思考のまま「いいよ」と返した。


「アルバムもまたいい曲いっぱい入ってたし、撮りたい曲また増えちゃったな」


「うん」


「そういえばお前、アルバム予約してたんだな」


「そりゃあするに決まってるじゃん」


「次からはしなくていいよ」


「え? なんで?」


「俺が予約するもん。一枚でいいだろ」


ああ、もう。せっかく気持ちよかったのに、目が覚めてしまった。


布団の中でもぞもぞと身体を反転させると、カーテンの隙間から差し込む月明かりに照らされた郁也は、目尻を下げてとても優しく微笑んでいて。


それはギターを愛でる時の表情によく似ていた。くしゃっと無邪気に笑う顔も好きだけれど、この笑顔が一番好きだ。


そうだね、と抱きついた私の頬に、郁也はそっとキスを落とした。


嬉しかったり楽しかったり、寂しかったり怒ったり。


これからも喧嘩をすることがあるだろうし、もうダメかもしれないと思うほどの喧嘩もするかもしれないし、もっともっと大きな壁が私たちに立ちはだかる時がくるかもしれない。


そう思うと、正直疲れるなと思うけれど。


でも、それでも。


郁也と、ずっと一緒にいたい。それが私にとって、なによりの幸せだから。