君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



嬉しかったり楽しかったり、寂しかったり怒ったり。郁也の言動ひとつで、こんなにも喜怒哀楽の全てが動かされる。


どこか懐かしいこの感覚も、長らく恋愛から遠ざかっていた私にとっては、正直少し疲れるものだった。


《今どこ?》


ピコンと鳴ったスマホの画面には、メッセージが浮かび上がっていた。


「フミくん?」


「う、うん」


なんてタイミングがいいのだろう。今日大学で突然呼び出された時も今も、まるで私の姿が目に見えているみたいだ。


そういえば、動画投稿を断っていた頃にもこんなことが何度かあった。私がどこへ逃げても目の前に現れていたっけ。彩乃が密告でもしているのかと思っていたけれど、違ったのかもしれない。


今日も、私を見かけたわけでも斉藤さんか誰かに聞いたわけでもなく、もしかしたら郁也は私の行動を監視でもしているのだろうか。


キョロキョロと店内を見渡して、あるわけのない監視カメラを探す。私を不信な目で見ている彩乃に気付き、「なんでもない」と呟いてスマホに目線を戻した。


居酒屋の名前を返せば、郁也は私を迎えにくるのだろうか。それとも、私を家に呼び出すのだろうか。それとも、ただの生存確認?