君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



「ムッカつく!」


激しい雷雨が鳴り止むことも、燃え盛っている炎が鎮火することもなく、つい一時間前に解散した彩乃を呼び出した。


今日は一刻も早くアルコールを体内に流し込みたくて、地下鉄で栄まで移動することなく、本山駅前の海鮮居酒屋に集合した。


理不尽極まりない八つ当たりを受けたビールジョッキは、動じることなくツンと立っていて。


もうすでにほとんど空になっている中身がこぼれることはなかったけれど、正面に座っている彩乃がビクッと小さく跳ねた。


「なんなの!? あの女! 喧嘩売ってんの!?」


「う、うん。わかるよ。それはムカつくよね。でもちょっと落ち着いて」


郁也にぶつけられなかった怒りを、ビールジョッキとテーブルと彩乃にぶつける。


いや、郁也にもぶつけたといえばぶつけたけれど、私の怒りを今運ばれてきた刺身盛り合わせに例えるのなら、ぶつけたのは隅っこに添えられているワサビ程度のものだ。


沸騰した頭の中にかすかに残っていた小さな小さな理性が、お皿からお刺身やツマが全てこぼれてしまわないよう必死にバランスを取ってくれた。