君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



またお昼ご飯を食べ損なってしまった。


今日もいつかのように身体が空腹を忘れ去ってしまってくれたらいいのに、ぐぅぐぅと鳴るお腹が私の苛立ちに拍車をかける。


郁也から『十六時に講義室』と連絡がきたのは、十六時になる三十分前だった。


もう帰るところだったのに、もっと少し早く連絡してほしい。いや、ちょうど帰る支度が終わったところだから、タイミングがいいといえばいいけれど。


当然のように呼び出すということは、私が大学にきていることを知っているのだろうか。


どこかで見かけたのかな。それとも、斉藤さんにでも聞いたのかな。


「ユズ?」


ずいぶんと日が長くなって、もう時刻は夕方だというのに、窓からは太陽の光が差し込んでいる。


ギターを弾いても俯いたまま歌わない私を見て、怒ることなく手を止めて首をかしげた郁也の姿が視界の端に映った。