君にさよならを告げたとき、愛してると思った。



学食で斉藤さんと目が合ったのは、そんな大学生活最後の日々が足早に過ぎていき、短すぎる冬休みが明けて卒論の発表を目前に控えた頃。


毎日きているわけじゃないのに、他にも学生はたくさんいるのに、どうしてピンポイントで会ってしまうのか。


たまに会っても私をスルーして郁也の元へ走っていく彼女は、にっこりと微笑んで私の目の前に立ちはだかった。


いや、ただ目の前に立っているだけなのに、私は就職先が決まってもなお卑屈になっているのか。今度は卒論のストレスだろうか。


「フミ先輩、今日もきてるかなあ?」


「え?」


「あたし、いつもフミ先輩のご飯買う役なんです。今日もきてるなら、買ってあげなきゃと思って」


なんだ、私が彼女だって知ってたのか。だとしたら、前に見かけた時も今も、喧嘩を売られているのだろうか。


今日もきてるかなあ?って、たった今大学にきたばかりの私にそんなこと聞かれても知るはずがない。郁也とはマメに連絡を取り合っているわけじゃないから、今日の予定なんて知らない。


「まあ、パシリに使われてるだけなんですけどね」


甘い声を発する口元に軽く握った手をあてて、上目遣いで首をかしげた。