たまに些細なキッカケでくだらない喧嘩はするけれど、しばらくすると郁也が何事もなかったかのように話しかけてきて、私もつい普通に答えてしまって、最終的にはふたりで笑い合っていた。


郁也は付き合う前よりもずっと優しくて、大切にしてくれていることが伝わってくる。


そう、大切にしてくれていることはわかっているけれど、少し不安になる時もある。


なぜなら郁也は、前に彩乃が言っていた通り、けっこうモテるからだ。


「あ、噂をすればフミくん……と、サナちゃん」


今日の午後一は講義がないので、学食が混雑する昼休みを避けて学食へ向かった。空いているのはいいけれど、おかげで目にしたくない光景をたまに見てしまう。


いつも郁也と一緒にいる、同じ学部の男の子たちと四人でテーブルを囲んでいる郁也と、彩乃いわく今年新しく軽音サークルに入った一年生の女の子たち。


もともとSNSでギター演奏の動画投稿をしていた郁也には特定のファンがついていると彩乃から聞いていたけれど、動画配信サイトへの投稿を始めてから、さらにファンが増えたらしい。