「フミくんとどうなの?」
付き合っていないから聞いてくるのだと思っていたけれど、彩乃は今でもこうして定期的に聞いてくる。
どうなの、もなにも、私たちは付き合い始めてからも相変わらず。
「普通だよ。音楽の話ばっかりしてるし、一緒にいる時もフミはギターばっかり弾いてる」
「ええー、なにそれ。あたし嫌だ、そんなの」
「そう?」
付き合い始めてからは、平日の夜も休日も郁也の家で毎日のように一緒にいるけれど、練習日以外も郁也はいつもギターを弾いていた。
郁也が『歌って』と言うから私はいつも歌っていて。そのうち『歌って』と言われなくても、郁也がギターを弾き始めたら自然と歌うようになって。
言葉にしなくても通じ合っているような空間が好きだった。
郁也といると時間が経つのがあっという間だったはずなのに、最近の私たちの間に流れている時間は、とてもゆったりとしたものに変わっていた。
「喧嘩とかしないの?」
「あんまりしないなあ」
「そうなんだ。仲良さそうだもんね」
付き合い始めてからの郁也は、ギターを持っている時でも笑っていることが多くなって、前みたいに怒られることはずいぶんと減った。
まあ、ゼロではないけれど、たまに怒られても私が口答えすることがないので、喧嘩にはならない。