「……なにそれ、どういう意味?」


「だってお前、俺のこと好きじゃないの? ていうか、これって俺ら付き合ってんのかな?とか思ってたんだけど」


なにを言ってるんだろう。


俺のこと好きじゃないの、なんて外したらめちゃめちゃかっこ悪いと思うし、付き合う付き合わないの話なんて一度たりともしたことがない。


自分の家庭環境の話にも私の恋愛話にも顔色ひとつ変えなかったくせに、郁也は今、眉間にしわを寄せて首をかしげている。


なにその困った顔。可愛い。


「あれ? 違う? だとしたら俺ヤバくね? 当然のように家入れちゃってるじゃん」


こいつは俺のことが好きなんだろうなと思いながら平気で家に呼んで、付き合っているのか疑問に思いながら物理的な距離を縮めてきたのか。


疑問に思っていたのなら、『俺らって付き合ってるの?』とでも私に聞けばいいじゃないか。


自惚れるなと言ってやりたいところなのに、どうしてだろう。


「……好き」


身体が勝手に動いたわけではない。


ずっと前から自分の中にある感情の名前がやっとわかって、それはごく自然に言葉として鳴った。


ああ、そうか。私、郁也のことが好きだったんだ。